この夏、盆踊りをみたか!?

 井の頭公園駅で下車した会社帰りの若い女性が、バックを肩にかけたまま輪に加わる。しかもごく自然に、流れるように。

 そのことに驚いたのが、かれこれ5年ほど前になります。この広場で行われる盆踊りは、井之頭町会が主要な年間行事の一つとして、毎年7月の終わりに実施しています。

 東京音頭、炭坑節など、一度は耳にした曲から、ドラえもん音頭といった子供向けの曲、ホームラン音頭、21世紀音頭、井の頭音頭など知らない人はこの盆踊りを体験しないと一生知らないで終わってしまう曲まで10曲ほどを、絶妙なタイミングで流して、2時間から3時間、踊りの勢いを止めずに怒濤のごとく盛り上げていきます。残念ながら、櫓の上で生で唄い手が唄うものではないのですが、その代わりに、これまた町会の“鼓響”という太鼓グループが生で太鼓を叩いて場を盛り上げています。踊りの輪は、最高潮になると三重になり、視界いっぱいに踊りの輪が広がり、これに見物客が加わるので、普段だだっ広い公園駅前広場が人で埋め尽くされます。

 毎年、外国人の多さ、子供が増えてきたこと、浴衣を着ている人が増えてきたことなど、新たな驚きがあり、今年も若い男性が踊りに加わるようになって、盆踊りの認識が少しずつ変化していることを実感させられます。

 今時田舎でも盆踊りに若者は参加しなくなっていますが、田舎臭いというイメージをはじめから持たない若者も増えているためか、毎年の楽しみにしている人も多いようです。純粋ににぎわいを楽しんでいるのだなと、固定観念で盆踊りをみていた自分が恥ずかしくなるくらいです。

 井の頭では盆踊りの役割も変化していますし、地区そのものもこうした催し物があることで、コミュニティがしっかりしています。田舎を知らない学者がまことしやかにいう“田舎にはコミュニティが残っている”といったことが、ここには現実として生きています。しかも、田舎とは違ったかたちで“都市の田舎”として、“都舎”とでもいうべきか、または、集まって楽しく暮らしているから、“集楽”とでもいうべきでしょうか。

 井の頭って、都市にあって都市にあらず。地価が高くて若者が住めなくなって、高齢化して楽しくない地区になるかもという危機感はあるけど、それを克服できれば、新たな都市居住のモデルになるかもしれないなぁ、なんて、櫓の脇に浮かぶ月を眺めつつ勝手に思いを巡らせるのでした。(う)