コミュニティの再生で社会貢献を−NPO法人福祉亭元山 隆さん−

自分達の住む町に“寂しい独居老人”をつくらない。そんな思いから、高齢者が気軽に社会参加できる「場」を立ち上げたのが、元山さんたちボランティア仲間だ。

多摩ニュータウン、諏訪・永山地区にある「福祉亭」。昼時ともなれば、お年寄りが次々顔を見せる。ひとり暮らしの老婦人がゆったり箸を運ぶ日替わり定食は一汁五菜、栄養もボリュームも満点だ。子育て中のお母さんも息抜きにやってくる。ソファで昼寝していく人もいれば、囲碁などのゲームに興じる御仁も。そんななか、訪れる一人ひとりに声をかけたりコーヒーを淹れるなど、元山さんは大忙し。胸にした可愛いリボンバッジの意味を問うと、「お手伝いとか支え合いの気持ちがあるというサインです。高齢者はもちろん、ここに暮らすみんなが助け合うコミュニティづくりを目指しているんです」と笑った。

じつは、元山さんが地域コミュニティの再生に労をいとわないのにはわけがある。丘を切り開いて造成した諏訪・永山地区は、自身が関わった開発エリアの先駆け。当初はインフラ整備の水準も低く、結果、坂道や階段などのバリアが多い住環境になっている。

「生活者としての視点が薄かった。おまけに、高齢化社会になるというのがほとんど頭に入っていませんでした。そこに今、郷里の親を引き取る“呼び寄せ老人”増加も追い打ちをかけています」。

入居者の大多数が団塊の世代。「親御さんは80代が多い。新しい環境に戸惑い、ますます閉じこもったり鬱病になったりする傾向があります。人は社会参加しないと命までもが危うくなる。近所や地域とのつながり、人と人とのつながりを取り戻さないと」。

ハードづくりの繕いとなる地域活動をすることで、自分のやってきた仕事を完結させたいという思いが元山さんにはあるのだ。

団塊の世代の人たちも、自分を今日まで生かしてくれた家庭や地域社会に目を向けてほしい。これからは自分が恩返しする番になってもいいんじゃないかな。」(文・月刊多摩ガイド)



定年退職をし、住み慣れた街でセカンドライフを送る団塊世代が元気です。このページでは、東京TAMAタウン誌会の企画により、多摩地域で生き生きと暮らす団塊世代を中心に紹介します。